川中の想い 建築への試行錯誤 林業の生産地の川上側と、住宅を建てて木材を消費する川下側の中間に有り、木材を製材し加工する川中側の想いであります。 これまで日本有数の雨の多い海部地域で先祖代々森を育ててきました。そして、家を建てる仕事も数年前から始めています。 ■地域の森を守り育てるしくみ 海部地域では、年間27万立方メートルの木が生長しています。ところが、海部の製材は5万立方メートルしか生産していません。 これでは、地域の森を守ることはできません。売れなくなった森には手入れが行き届かず荒廃します。 遠めには豊かな緑に見えても、木々の勢いはなく、ちょっとした風で倒れたり、 水を蓄える力がないので洪水を引き起こしたりします。 人に災いをもたらす森は生物さえ凄むことはありません。 都会の人の目には「豊かな緑」でも本当は「緑の砂漠」というべきでしょう。 けれど、材木を買ってくれる人がいて林業が産業として成り立つと、森は干ばつや枝打ちなどの手入れがなされ、 杉や桧の人工材でも樹幹に広葉樹が生い茂り、生物が凄める豊かな森、生態系として安定した森になります。 ■価格に対する挑戦、そして地域の森も守りたい 私たちが最初にぶつかった壁は価格です。家を建てることは人生で最大の高額な買い物です。 良い物を少しでも安く作りたいというお客様のお気持ちを十分に理解しています。 高額所得者のためだけの住宅に絞り込む方法もありますが、私たちは森を守る目的で建築に進出したのですから 「安い輸入材に負けてしまった・・・」などと愚痴をこぼしているわけにはいきません。 森を健全に循環させていくためには、適切に木を伐採していくことが必要です。 ですから、できるだけ多くの人々に使っていただくことに意味があるのです。 ■コストアップを防ぐとともに、品質向上を同時に達成するための方策がありました いい家を安く提供しなければ、生活者の皆様に使っていただくのは難しい。 しかも森を守るためには、地元の木材を使う人がある程度多くなければなりません。 ならば、品質を落とさずに(むしろ品質を上げながら)コストを下げることを考えました。 1.林業家が施工することで流通コストを省きました。 2.接着剤を使っている集成材や新建材に触れると、気分が悪くなる人もいらっしゃいます。 それらを使わずに、地元で伐った無垢の木材のみをふんだんに使用します。 3.ハウスメーカーの同価格帯の家に使用されている木材は、坪当たり0.7立法メートルに対し、 当社の住宅は、2倍の1.4立法メートル程度と、密度が高くなっています。 これは住み心地はもちろんのこと、耐久性や耐震性に差がでます。 私たちが使っているのは、地元の樹齢50〜60年のスギ、ヒノキです。 それでもコストにそれほどの差がでないのは、木材住宅における材木の費用の 割合が2割程度だからです。 それでは、あとのコストは? 広告宣伝費や営業マンの人件費などでしょう。当社には営業マンがおらず、広告宣伝も必要最小限にとどめています。 その代わり、社長自らがお客様にご説明しています。 ■私たちが今、取り組んでいること 木材の品質は乾燥の程度によります。理想は、数年から十数年と長い時間をかけて乾燥した木材を使うことですが、 そうすると誰でも手が届く価格にはなり得ません。 だから、人工乾燥という手法にたどりつきました。徳島県下でも有数の人工乾燥機を備え研究開発を進めた結果、 安定した水分率を時間をかけずに実現しました。 品質の確保、性能保証でも優れているということでSGEC認証を取得しました。 (世界的に森林を守る「緑の認証循環会議」の認証。審査機関は(社)日本森林技術協会) 匠の技を継承する大工さんが少なくなっています。また熟練した大工さんとて、高齢化により腕が落ちてきます。 この熟練の技を機械にやらせることはできないかと考え、コンピューター制御の設備を導入し、大工の技に 匹敵する制度を実現しました。現場へは、当社工場で所定の寸法にカットされた木材を運び、現場はそれを組み立てるという 分業仕事にしたのです。 これらのことで、ひとにやさしい地元の木材を手頃な価格で建てるというねらいが実現しました。 林業家が建てる家、木材を知った者が木取りを行います 機械任せのセットでは、見た目の寸法が同じでも、実際に組み込んで時間が経過すると狂いが生じたり、 美観を損ねたりすることがあります。木は生き物ですから、どうしても加工に適した面や場所、使用を避けなければならない場所 (将来の割れなどにつながる)を見分けたうえで加工をしなければなりません。 いわば、木取りには大工の頭領の目と判断力が必要です。コンピュータは正確なことはできますが、木取りの判断は木材を 知り尽くした林業家が行います。 このことがどれだけ住宅性能に関わってくるかはおわかりになると思います。 私たちが採用しているのは、伝統的な軸組工法です。伝統工法は、木材をガチガチに接合しません。 金具でつなぐとかえってそこが破壊点となる恐れがあるからです。 緩いようでいてしなやかに振動と呼吸する柔構造。まさに先人の知恵です。 (伝統工法のイメージ写真)/釘も接着剤も使わないのに強固。しかも簡単にばらすこともできます。 十分な睡眠を取ることで英気を養ってください。 人には眠ることがかかせません。しかも質の高い眠りが必要です。地元で育った木材には、地元の気候がなじんでいます。 湿度が高いときは、湿度を吸い取り、湿度が低いときは湿気を吐き出し、人がちょうど良い湿度(60%)前後を 保つ働きが期待できます。 これは365日、電気代も部品代も要らない、自然の調湿気候です。 自然の家は音の響きもやさしく、人の声もおだやかに響きます。 そんな家でぐっすりお休みなさい。深い安らぎをお感じになるでしょう。 トップ画面へ |