「徳島すぎ」の性能を明らかにするために、林業家や徳島大工学部、徳島文理大薬学部などからなる産学官の研究会をつくっています。
山で伐採された丸太の切り口を観察すると、赤みと呼ばれる「心材」と、その周りの白太(しらた)と呼ばれる「辺材」に分かれています。辺材は根からの水を運んだり、でんぷんなどを貯蔵するなど一部生活機能を持っていますが、心材ではすべての細胞は死んでいます。
「徳島すぎ」の心材は美しい淡赤色をしていますが、伐採木の中にはときどき黒く変色したものが現れます。黒心(くろじん)と呼ばれるこの材は、水を多く含む上に、見た目が悪いことから木材市場で低く評価されています。こうした黒心は遺伝によるほか、病害虫や幹への障害が原因で起こるといわれています。
嫌われものの黒心材ですが、土台に使われるなど耐久性が評価されている地方もあります。本県から、シロアリの多く生息する沖縄などに黒心材を出荷していたこともあるそうです。そこで研究会で赤心、黒心について調べてみました。
まずイエシロアリを用いた試験では新たな殺蟻(ぎ)成分が見つかりました。これらの成分をろ紙に含ませ、シャーレでイエシロアリ33頭を飼育したところ、3日ほどですべてが死滅するという、極めて高い殺蟻性を示しました。
また、黄色ブドウ球菌を用いた試験では、抗菌活性を示す値がヒバなどに含まれるヒノキチオールよりも高く、抗生物質に近い成分もみられました。そして黒心の殺蟻・抗菌成分は赤心に比べ、たくさん含まれていることが分かりました。
木は年齢を重ねると、生活機能をつかさどっていた細胞が、あるとき死細胞と化します。そのとき虫や腐朽菌の繁殖を防ぐために細胞内の内容物は心材成分に変わります。これが心材化と呼ばれる現象です。
植物は傷つくとフラボノイドなどのポリフェノール成分(緑茶やブドウなどのに含まれる)が増加し、濃い色となるそうです。黒心材の変色も、何らかの強い自己防御機構が働いているのではないかと考えています。
なお、試験に用いた「徳島すぎ」は樹齢80〜90年生の葉枯らし乾燥材です。これは伐採後、枝や葉をつけたまま山で3ヶ月以上放置し、葉の蒸散作用により材の水分を抜く乾燥方法です。昔はあく抜き、渋出しなどと呼ばれ、どこの林業地でも行われていました。この施業を昭和50年代に本県の林業家が復活させ、当研究所などと全国に先駆けて技術開発したものです。
材の色つやを向上させ、水分を抜くことを目的とした葉枯らし乾燥ですが、化石燃料に依存しない乾燥法として、また優れた成分を材内に蓄える技術として見直されそうです。
|
|