じりりりりりりりりりりりりりりりん…
けたたましく部屋に鳴り響いた目覚ましの音。
騒音の原因を慌てて止めると、スイッチを切っておかなかった自分をちょっとだけ呪った。
「びっくりした」
眠りから覚める為の目覚まし時計。
寝ている時に聞こえてくるのはとても小さく頼りない。
でも、起きている時に突然鳴ると、同じ音だとはとても思えないほど凄い音量だったりする。
「ふふふっ…変なの」
どきどきしながらも我ながら少し可笑しくなる。
今日は、目覚まし時計のセット時間より随分早く起きていた。
学校に行く為の用意といったら、後はあの制服を着るだけ…。
この私が”真新しい制服を着るのが楽しみで目が醒めた”なんて自分でも信じられない。
「さて、それじゃ着てみましょうか」
誰もいない自室で1人意気込む。
私はハンガーにかかった制服を丁寧に取リはずすと、その袖に手を通す。
少しゴワゴワとした糊のきいたところが新品の醍醐味だけれど、体にフィットしない感があり少し落ち着かない。
「でも…」
鏡に映った私の顔は笑っていた。
「これを着ると大人に近づけたっていう実感があるわね」
部屋の隅にある鏡で着こなしをチェックしながらポーズをとり、自己陶酔タイムに入ってみたりする。
新しい制服を着た自分を見ていると、生まれ変わった気がした。
いや、これはチャンスかもしれない。
中学デビューを機に過去の自分にサヨナラを言って新しい自分になる。
「うん、がんばろう」
小さくガッツポーズをとって自分自身にエールを贈る。
私は『栗原 サキ』
ちょっぴしスリリングな日々をおくってはいるけれど、普通の女の子と思いたい１２歳。
中学校入学初日の朝、新しく何かが変る様でわくわくしていた。