海辺のカフカの音楽
2002-10-17
大島さんがカーステレオで聴いていた
シューベルト ピアノソナタ ニ長調 D.850
大島さんがマツダの緑のロードスターのカーステレオで聴いていた、「不完全で天国的に冗長で、すべてのピアニストが例外なく二律排反の中でもがく」という、シューベルト ピアノソナタ ニ長調 (D major D.850, op.53, 17番) を弾いてるのはだあれ?
ロマンティシズムの精華と表現されている難曲です。へんに工夫し過ぎた演奏はシューベルトの本質を妨げてしまう。
音楽として退屈にならないこと。
ロマンティシズムを表出すること。
そのふたつの間であらゆるピアニストがもがいている。成功した人はまだいないと大島さんは言います。
アーティキュレーションを強調したり
ルバートをかけたり
速弾きしたり
メリハリをつけたり
しているのはだれ?
地味なシフ(Schiff)ではないような。シフと逆のことをやってるようなピアニスト。
リヒテル(Richter)は有名すぎる。大島さんのような人がわざわざカーステレオで聴くとも思えない。
工夫し過ぎるというと、やっぱり内田光子かな?
よくまとまっているのは
ブレンデル(Brendel)
アシュケナージ(Ashkenazy)
でも大島さんの心を引かない。
(ただしアシュケナージはまだ17番を録音していない)
変なことしないで、しかも破れゆく美(ロマンティシズムの本質)を表出できる人というと?
豪華絢爛で外向的な内田光子に破れゆくような雰囲気は無いし、 レオンスカヤ(Leonskaja)は、哲学的で内向的だけど、ロマンは薄い。 大御所のケンプ(Kempff)は質実、でも剛健ではない。 ロマンティシズムの表出ならバレンボイム(Barenboim)がうまいかなと思うけれど、17番は録音していない。 田部京子は17番をまだ録音してませんが、まちがいなく全曲録音するでしょう。 アルカディ ヴォロドス(Volodos)も17番はまだ録音してません。期待したい人ですが、全曲録音するつもりかどうかがわかりません。
シューベルトには本来、ヴィルトゥオーゾなピアニストが、 脱力して、とぼとぼ弾くと、 わびさびやロマンティシズムが いい感じで出るかも。 なにかやってやろうという感じの ピアニストは あれこれ工夫しちゃってうまくいかないかも。
17番を録音してるピアニストで確認できたのは
- Andras Schiff
- Alfred Brendel
- Wilhelm Kempff
- Sviatoslav Teofilovich Richter
- Artur Schnabel
- Emil Grigoryevich Gilels
- Walter Gieseking
- Clifford Curzon
- 内田光子
- 館野泉
- Teldec/ Elisabeth Leonskaja
- Emi/ Martino Tirimo
- Denon/ Michel Dalberto
- Denon/ Mikhail Lidsky
- Nonesuch/ Richard Goode
- Naxos/ Jeno Jando
- Harmonia Mundi/ Alain Planes
- カメラータトウキョウ/ 田崎悦子
- Live Classics/ Elisso Wirssaladze
- Albany Music Dist./ Russell Sherman
- Centaur/ Gary Steigerwalt
- Vox/ Walter Klien
- Analekta/ Anton Kuerti
- Capriccio/ Michael Endres
- Celestial Harmonies/ Nikolaus Lahusen
- Hungaroton/ Malcolm Bilson
- Accord(Fra)/ Gregor Weichert
- Tudor Recordings (Swi)/ Gilbert Schuchter
- Seven Seas/ Radu Lupu
- Eigenart/ Christoph Ullrich
- Arcana/ Paul Badura-Skoda
2005-11-25
その後、ステレオサウンドのエッセイが、来た。
「ソフトな混沌の今日性」
村上さんが実際に聴いている D.850 が紹介されています。
D.850 は 15枚所有してる、
最初に聴いたのが イストミン(Columbia)、
現代の録音でおすすめはアンスネス (EMI 2002)、
次がシフ(Decca)、パドゥラ-スコダ(Arcana)、クリーン(Vox)、カーゾン(Decca)
アンスネスはノルウェイのひとです。 超一流どころは全滅です。
意味がなければスイングはない
村上 春樹
このエッセイ「ソフトな混沌の今日性」は単行本「意味がなければスイングはない」に収められています。このページ冒頭の答もはっきりします。大島さんがカーステで聴いていたピアニストが誰なのか、僕は確信をもちました。
星野さんが気に入った百万ドルトリオの
ベートーヴェン ピアノトリオ「大公」
ルービンシュタイン/ハイフェッツ/フォイアマン(1941年録音)がクラシック音楽喫茶店でたまたま流れていたわけですが、スーパースターをそろえてもうまくいくとは限らないという例に持ち出される録音でもあります。名演として有名なわけではありません。歴史的価値のほうで語られます。大公を聴こうというときに、わざわざ百万ドルトリオをきく人は少ないでしょう。
でも! 星野さんは気に入ってしまった。音楽との素直な出会いです。
オイストラフ トリオ(1958年録音)
スーク トリオ(1975年録音)
なども有名です。大島さんはスークが好き。
海辺のカフカ
レオンスカヤ シューベルト D.850



