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お金をかけずにいい音で聴く方法

暑い (2008-08-11)
主力スピーカー (2000-11-24)
黒いツール (2000-09-17)
アースしよう (2000-05-30)
むしろ細めがいい (2000-04-25)
ピンポイント (2000-03-27)
いい加減 (2000-03-26)
現実的オーディオ 組み合せ実例 (2000-01-31)
SACD (2000-01-15)
電池駆動 (2000-01-11)
自然な要求 (1999-08-29)
表現 (1999-08-25)
格言 (1999-06-05)
電線を切ってみる (1999-04-06)
音楽のためのオーディオ (1998-11-23)
2008-08-11

暑い

阿波踊り前夜。

主力スピーカー

アートレコードの店内用スピーカーが、
B&W DM602S2 に変わりました。
2本で定価70000円。いわゆるバジェットHiFi。
このページのテーマにぴったり。

DM602S2は、
リニアフェイズな独立ツイーターでもないし、
マトリックス構造キャビネットでもないし、
18cmケブラーウーハーは中音のリアルさと低音のスピード感で16.5cmに劣りそうだし。
下手すれば中途半端で、ケブラーウーハーの欠点ばかり出かねない、危なっかしいモデル。
だから逆に、実際の音がどうなのかとても気になる。

伝統的英国製2ウェイスピーカーらしいルックスがB&Wとしては異色、でもやっぱりどこかモダンでクールな感じがするのはB&Wらしい。

梱包の箱から出すときに手や目や鼻に伝わる感触が、1本10万円クラスのスピーカーと同じような感じ。全然安っぽくない。
駄目なスピーカーだとほんとにこの時点で、なんか駄目そうと思わされます。ほんとです。

音楽を守りつつどこを捨てればいいかというバランス感覚が合理的でセンスがいい。
中身もしっかりしてます。
クロスオーバーネットワークに手抜きがない。
(適切なクロスオーバー周波数と減衰のカーブ。部品もちゃんと空芯コイルとフィルムコンデンサーを使ってる)

ノーチラスチューブローディングな
フラットリングサスペンションのツイーターも投入。
フロントバッフルにマウントだから音場感は期待できないけど、
無理して独立ツイーターにしないのはコスト的に潔いと思う。

18cmのケブラーウーハーのセンターキャップは砲弾型だけど、ただのセンターキャップにすぎず、かたちが砲弾なだけで、
このあたりの仕組みはNautilus805やCDM1SEの16.5cmウーハーとまったく違ってる。
ここはちょっとがっかりした。

音はふわっと柔らかい。

地味で、これみよがしなところがない。
ぱっと聴いただけでは全然ぱっとしないのが、いかにもB&Wらしい。時間をかけてじわじわ来るタイプ。
音量を上げたいと思わせない。ちゃんと微妙な音が出てるから。

鳴らし初めた瞬間から素性の良さを感じる。
低いほうの鈍さはエージングが進めば多少良くなるかも。
(実際に、日毎、低いほうの解像度が上がってきてるし)
この価格でも混変調歪みや付帯音が少ないのはB&Wならでは。
とても1本35000円とは思えない。

もちろん価格を無視したら、
かちっとしたエッジも芯もしまりもないし、ダイナミックレンジが広くはないので音量が伸びて欲しいところで頭打ちになるし、バスレフなので低音の量感はあるものの薄いし伸びてない。
(バスレフ型は密閉型に比べて小音量でも微妙な音が出せるものの、大音量ではどうしても崩れるし、低音の音階が曖昧になる)

聴きやすいけどオーディオ的快感がまったくないわけではなくて、やっぱりB&Wだなあと思わせる、ぞくっとするような空気を出してきます。

(例えばTannoyの音は無難なところで安住してしまうところがあって、その場所に音楽がむりやりひきずり込まれて外へ出ていけない感じがある。音楽がTannoyの解釈の枠にはめられちゃう。だから聴きやすいけど何か表現としての突っ込みが足りない。はっとさせられることがない。オーディオ的な欲求にも少しは応えてくれないと、バジェットHiFiとしてはおもしろくない)

ボーカルはCDM1SEに鮮明さで負けるけど、表現のサイズとしては実物大に近くなるからどっちもどっち。

DM602S2は能率がちょっと高い(90db)から805より楽なかんじですうーっと音がでてくる。解像度では805にもちろん負けるけど音楽全体の表現の豊かさはDM602のほうが出たりする場合がある。

いい意味で普通の音が、1本35000円で出てるんだから凄い。
安いのに音楽を損ねるような粗相がない。
安いからしかたないよなーという我慢をあまりしなくて済む。
(もちろん安い割に良くできてるということであって、お金が余ってるなら、あえてこれを選ぶ理由はないんですが)

DM602S2は、B&Wの癖がより強調されちゃってる。
家庭用だけど、モニタースピーカーとして使える品質はしっかりある。AVのフロントに使うにはもったいない。
もともとB&Wの音が好きな人にはいいけど、向かないひとに向かない。

805は万能型モニタースピーカーだけど、DM602S2はアコースティック専用に特化してるから805では聴いたことないような深みある音が出るときがたまにある。18cmウーハーと非マトリックスキャビネットの組合せも面白いというのが実感。

モーツァルトやハイドンなどは朝飯前。
ショスタコーヴィチもダイナミックレンジは狭いけど、
しっかり深みを表現できるから不満は感じない。やかましく前へ出るんじゃなくて奥に深く広がる。テルデックのロストロポーヴィチ指揮の交響曲第11番のラストでは、ちゃんと鳥肌が立った。(一本35000円のスピーカーで鳥肌が立つなんて)

浮遊感はでるから、エンヤやリベラはばっちりだけど、
クレトゥ系エニグマが曲によってはもたつく。といってもCD自体の録音があまりよくないせいもあるけど。
フランクピーターソン系は大丈夫。
805ならもたついてもエッジはちゃんと出る。16.5cmとマトリックスキャビネットのほうが当然かちっとする。

声楽にはもちろん最適。声では旧805に勝ってる。旧805できつさが気になる部分がDM602S2ならしなやかにすうーっと出てくる。
(リベラを再生して声が歪むなら、それはスピーカーが悪いんです。リベラはかわいらしい癒し系の音楽だけど、スピーカーにとっては癒しどころではなくて弱点をえぐられるきついCD)

マトリックス構造でないB&Wは鳴らしやすい。

CDM1はB&W買ったという気分は大きいし、
音楽の守備範囲も広いから選択としては無難だけど、
805と音の傾向が同じ(805をそのままグレードダウンさせたような音)なので、欠点ばかり目立ってしまう。
でもDM602S2なら805で出せない音が出たりするから、欠点があまり気にならない。得してる。
いま、CDM1NTではなくてDM602S2をわざわざ選ぶ理由は、アコースティック楽器のちまちましない鳴りっぷりと、低いほうの余裕あるスケール感。805では出ない音が出たりすること。

DM602S2は実際にじっくり使ってみないと真価を発揮しないタイプでしょう。

どこかのオーディオ屋さんに置いてあってもぱっとしないはず。お店もこのクラスをまじめに扱う気がない。こんな安物を売っても儲からないという目先のことしか考えていない。というかディーラーはこのクラスのオーディオの音をまじめに聴いたことがない。このクラスを大切にしないからオーディオ文化の底がしぼんで、高級品も売れない。入門者にはいい思いをさせなきゃいけない。

安いからといって入門用だとは限らない。経験の豊富な大人にもちゃんと大事に使ってもらえる品質の製品を無駄なく低コストで実現するというのは一番難しい。これができれば一流のメーカーです。安物だからいい音するわけないという態度のメーカーやお店は淘汰されていくでしょう。こういう性格の商品をメーカーが大切に作りディーラーが大切に売るという文化が日本にはない。単機で DM602S2 をデモっているディーラーなんてありえないから、どこかの家庭で実際に鳴っている DM602S2 にお目にかかるまで、このクラスの優れた製品がどれだけ凄いか知ることはないでしょう。

高度な再生を追及すればもちろんアンプを選びます。メタルツイーターが落ち着くのにも時間がかかります(2年かかるという人も)。解像度が高くて、低音の弾力感とリズム感のいいアンプ(つまりハイスピードな電流供給能力)が必要なのは、どんなB&Wにも共通すること。

B&Wは、価格にかかわらず、Nautilus800シリーズからCDM1シリーズ、DM600シリーズにいたるまで音色や音質がきちんと統一されてる。

B&Wの音っていうのは、ゆったりした低音にきらきら繊細な高音が音場感たっぷりにふんわりのっかる典型的な美音系。
これは意図的にやってると思うけど、ケブラーの重くて鈍い音を、ハードなメタルツイーターの情報量やエッジ感やスピード感で補っているんでしょう。これをソフトドームツイーターにしたら、全体が甘すぎてだめかも。(逆にウーハーが固くて共振の多いスピーカーはソフトなツイーターでバランスを取ったりする)

B&Wは805でも並のアンプでは低音が、質はいいんだけど腰抜けになる。ケブラーウーハーの宿命。これを存分に弾力的に鳴らすにはかなりハイスピードで低音の弾みのいい、フォーカスのぱちっとしたアンプが要る。
パワーよりスピード。具体的には真空管やMOS-FETのアンプで、トランスはトロイダルで、電源のフィルターコンデンサーは大容量だけど鈍いものより、小容量で高品質なものがいい。

B&Wはいい音だけど、決して正確な音というわけでもない。
声も弦もナチュラルで美しいけど、リアルかいうとそうでもない。人間が思う理想のきれいな空の色って本当の空の色とはちょっと違ったりするけど、そんな感じ。
作られた耽美的世界。
実際の声よりいい声に聞こえたりする不思議。

聴いてて気持ちがいい。

(2001-12-21) B&W DM600シリーズは製造分完売だそうで入手困難な状況になりました。このクラスのスピーカーの代替品には、B&W CM2というモデルがありますが、CDM1NTと価格的に差がないので、あえて CM2 を買う理由が見当たらないのですが CM2 のデザインは女性に人気があります。
その後、DM602S2 はバージョンアップされ DM602S3 (シリーズ3)として発売されました。歪みと濁りが減り、音場感以外では 旧805、CDM系を超えました。クラシック音楽再生にはもうこれで十分というレベルの音に到達してます。

黒いツール

B&Wはメーカー製とは思えない武骨なデザインだった。まるで素人の自作みたいに。ツイーターが取って付けたように乗っかってる。実際に取って付けている。リニアフェイズを真面目に追及したらこうなるしかない。
色も黒で愛想がなかった。それがよかった。
理詰めで精密なツール感は、輸入していたNakamichiのそれと似ていた。

いまはメジャーになり、デザインも理屈っぽさと色っぽさを合わせもつようになった。
Deccaなどメジャーなレコード会社のモニタースピーカーに採用されたし、日本ではNakamichiから日本マランツ取扱いになったことも大きい。雑誌の広告もよく目につく。

スピーカーなんて買ったことない女の子が、Nautilusのことだけは無邪気に知ってたりする。でも値段は知らないみたい。

音の入口と出口を、Linn CD12とB&W Nautilusにすることは、現代のオーディオのひとつの答に違いない。高額だがバブルではない。合理性があるから。
高級車なんか買うくらいならNautilusでも買ったほうが幸せになれそう。地元のノーチラス神社として参拝者が絶えないかも。

はやってるから、雑誌で評価が高いから、B&Wを扱う販売店が多くなった。B&Wを万能のスピーカーみたいに売り付けている。
お客さんも過大に期待して買うから問題が起きる。
昔の、なんでもかんでもJBL(4畳半に4343)な時代を思い出す。

B&Wはオーディオマニアにはすすめたくない。
音楽を聴きたいけど、音楽を損ねるようなシステムでは嫌だという人に向く。特に声楽やオペラが好きな人に。

ジャズもいける。ジャズだって結局は中域がすべてだから、声楽に強いスピーカーはジャズもあっさりこなしてしまう。
B&Wはジャズには向かないという評論家もいるけど、それはジャズマニアには音楽そっちのけで、音圧命、スピード命、エッジ命の音マニアが多いから。(低音のスピード感やエッジ感は、好き嫌いの問題であって、音楽の表現にとってそんなに本質的なものじゃない。遅い低音でジャズを聴くのもそれはそれでまた味わい深いものだったりする)

B&Wは派手な外部独立のツイーターや黄色いケブラーウーハー、内部が桟でがちがちのキャビネットなどに目がいくけれど、実はネットワークにすごく気を使ってる。ネットワークは見えないところだからいくらでも手抜きができるところ。いい部品(最高ではないけど)使ってるみたいだし、クロスオーバーとスロープの選択が音楽的にうまく考えてある。やっぱり作ってる人の耳とセンスがいい。

アンプはハイパワーを必要とするなんて意見が広まってしまってるみたいだけど、そうは思わない。
瞬間的な電流供給能力と位相特性の性能が高いこと。つまりパワーよりスピードが必要ってこと。
ハイスピードなアンプならなんでもそれなりになってくれる。ハイスピードでありながらゆったりした豊かな響きで鳴りっぷりのいいアンプが欲しい。ロースピードな日本製金満アンプとは水と油。

B&Wに対抗できるスピーカーは?
Tannoyの同軸2wayかな。

アースしよう

音場の再現性を求めるときちんとしたアースを取る必要があります。でも雑誌も評論家もアースの重要性をあまり取り上げません。

そもそも日本の電源コンセントの仕様が悪い。
なんでアース線を省くのか。
そんなものけちったくらいで得られることより、失うことの方がはるかに大きいのに。
3線式のコンセントなら自動的にアースが取れるし極性を合わせて差し込むなんてことも必要無くなります。

家を新築するなら絶対にコンセントは3線式にして、しっかりアース線を配線してもらいましょう。できれば200Vのコンセントも用意して、外国製のアンプを200Vで使えば、本来の性能を発揮してくれるでしょう。

ユーザーの方で対処するには、しっかりした1mほどの鉄棒を地面に打ち込んで、それから太い電線を部屋まで持ってきます。
クーラーの200V用のコンセント付近にはアース端子があるはずなので、それでもかまいません。水道管は絶対だめ。

で、各コンポから直接独立したアース線をひっぱってきて、一点へアースします。このアースにはオーディオ製品以外はつながないようにします。めんどくさがって各コンポのアース端子を数珠つなぎにしてはいけません。

アンプにはアース端子があるのでそこから電線をひっぱってくればいいんですが、CDプレーヤーは簡単にアース線をひっぱってくるというわけにいきません。シャーシを止めているねじをひとつ緩めてそこへ電線をつなぐというのが一番簡単。

アースの結果は、もやもやしていたものがすかっと晴れ渡り、音場の深さ高さ広さがぐんとよくなります。音色も正確になり、しっとりしてきます。

金額でいえば5万円から10万円くらいの品質向上になるかな。
本質的に優秀なものほど音質向上の度合は大きい。
お金はほとんどかからずに。

むしろ細めがいい

安っぽい細めのコードがかえって音が活き活きしてたりする。

結局、コードの直流抵抗分はスピーカーに直列に抵抗が入ること以外のなにものでもないから、この抵抗分はほとんど気にする必要がない。抵抗分が多ければその分アンプのボリュームを少し上げればいいだけ。

逆に、抵抗値の低い太いコードにすれば音がよくなるような気がするのは、直列抵抗が少ないことでちょっと音量が大きくなるからかもしれない。質がほとんど同じ音を聴き比べたとき、少しだけ音量の大きいほうを良い音と感じる錯覚が人間にはあるから。安易な比較試聴には問題も多い。音量を一定に保って試聴するというのは難しい。ヴォリュームの位置を一定にしてれば済むというものではない。比較のたびヴォリュームをいったん絞りきってから聴感に頼ってもとの音量に戻すということをいちいちやらないと判断を誤る恐れがあります。

抵抗はむしろある程度あったほうが音が良くなるかも知れない。
細めのコードのほうがあきらかに音場は広がるし、解像度もよく、音楽性もダイナミックで力強い。

もちろん、抵抗はあったほうがいいといっても、あまりに細いと振動に対して弱く、この点から音が悪くなる。低容量にこだわり過ぎたコードがよく陥る問題です。

細くても振動しにくい構造のコードが良い結果を出してくる。
ピンコードなら太い5C-2Vより細い3C-2Vのほうが良いし、モンスターケーブル社の良品M350iも3C-2Vなみの細い単線を使っている。

太いことはいいことだと、なんとなくオーディオ雑誌に思い込まされていたから、細めのコードの音の良さを実感したときは、悩んだ。この事実をどう説明する?どう受け入れればいい?

細いコードは抵抗値が多くなる。
つまりスピーカーに直列に抵抗が入ると考えれば、
(1)定電流駆動っぽくなること。
(2)アンプの負荷として見れば、スピーカーがより抵抗に近付くこと。したがって、普通のアンプ(定電圧駆動)の負荷として、位相特性が良くなる。

また細いということ自体にも意味があると思う。
あまりに太いコードは電流の反射の問題が起こるし、電流の立ち上がりも悪くなる。つまりインピーダンスのマッチングがとれてないということ。
(そもそも端子に入らないような太いスピーカーコードや電源コードより太いピンコードなんてものは常識的に考えて何かばかばかしいと思うのが自然という気がする)

アンプのドライブ力が同じならコードは細いほうが楽に電流が立ち上がる可能性がある。電流の挙動は水流のそれに良く似ているから、水鉄砲にたとえれば、口径はある程度細いほうが勢い良く水が出る。同じ水鉄砲で口径だけをあまりに太くすると、いくら強く引き金を引いても水の飛びは鈍くなる。引き金を引く指の力がドライブ力つまり電源の力。

MOS-FETは内部抵抗が高めだけど、これもむしろ何かいい結果を生んでるのかもしれず、気にすることはないのかもしれない。強力な電源を持ったMOS-FETシングルプッシュプルのアンプに、導体は細めだが振動に強い構造(撚り線より単線が有利)のコードを組み合わせるのがいいみたい。とにかく電源は強力じゃないと話にならない。まあこれも常識的な範囲ということですが。

ピンポイント

観察するなら最低3箇所から見ないとほんとの形が見えてこない。

オーディオは眉唾ものも多くて、本人は善意で作っていたり、自分の製品を信じていたりするから、始末が悪い。あきらかにだますつもりの製品もありますが、、、

インシュレーターやコードの類には怪しげな代物が多くて、物理音痴の文系ライター(JAZZ界に多い)がよくひっかかってたりします。
一本50万も100万もするようなコードを買って自慢してるようなひとは論外なのでほっといて、問題なのは4、5万程度のもの。そんなに高くないからつい買ってしまうんでしょう。でもこういうジャブが懐にじわじわ効いてくる、、、

たとえば、ピンポイントという発想があります。
くぎのようなさきっちょを金属の平面で受けるという発想です。
メリットは、

  • 荷重が一点に集中するために制振効果が高い。
  • がたつかない。
  • ゴムのような弾性がないので音が鈍らない。

てなことで、たしかにそのとおりなんですが、この発想を利用したインシュレーターを使って見ると、実際に音が良くなるわけではない。この事実をどう説明するのか。

(音がよくなったと喜んでいる人は多いんです。それは音全体を聴いてないからかも。ピアノのたちあがりだけとか、低音しか聴いてないとか。基音が濁ったりしているのに気付かない。妙な癖が乗ってどんしゃりになってるのに気付かない。中級者がよくはまる落とし穴です。以前の音がよほどひどかったから、こんなものでもないよりはましなのかもしれません。安物のワインだってジエチレングリコールをちょっとまぜれば高級ワインみたいになったりするんだから)

なぜ良くならないか。

ピンポイント思想の論点はピンポイントの部分にまさに集中しています。
ピンポイントインシュレーターがどんなものか見たことない人には、言葉だけではわかりにくいかもしれませんから、図をかきます。Gimpを起動して、、、

pinpointgraphics by Gimp

こんな感じ。500円硬貨の上に、コマのような金属の円錐を、さきっちょを下にして乗せたようなものです。これを4組か3組で使います。CDプレーヤーやスピーカーの足として使うんです。

さきっちょがつんつんしてる部分、このピンポイントが、ダイオード的であり、振動もダイオード的に遮断されるというのです。

しかし、別の視点から見てみると、

  • 単位面積あたりの荷重がべらぼうなら、どんなに固い材質で作っても固さが足りないはず。ピンポイントの部分は結構柔らかくなってはず。コンプライアンスをなくすという効能は崩れる。
  • ガタがないといっても、それはピンポイントの部分の話しであって、円錐の平面の方や受け皿のほうの底の接地はガタガタ。そのガタをとるためにゴムなどを挟むしかない。こうなると本末転倒。ゴムを使うんだったらピンポイントなんて意味が無くなる。逆ににできるだけ広い平面で受けて単位面積あたりの荷重を減らせばゴムでも固く使える。要は使い方。

こうして、発想がまさにピンポイントで近視眼的なピンポイントインシュレーターは現実の前にもろくも崩れるのでした。

いい加減

オーディオは電流とか振動とか波動系がまったくいい加減で、技術者はすべてをわかってやってるわけではないということを知れば、べらぼうな価格の製品を買うのは人柱をかってでるようなものだと思えてくる。
電流の流れ方のしくみなんて最先端の物理学でも完全にはわかってない。だからこそ、アマチュアのユーザーがあれこれ手前勝手な実験してみる意味はあるわけです。素人プチ物理学者。

似非科学ではありません。ちゃんとした物理です。
その実験結果に理屈を付けて論文にして発表するとなると、これはさすがにプロの物理学者の仕事になってしまいますから、われわれアマチュアは草の根実験に徹すればいい。
その結果は公表しなくたってもかまわない。
真理を見つけてもだれにも教えず、ひとりじめしてればいい。

コードの分野がアマチュアにも実験しやすい。

オーディオ製品の現実なんてほんとにいい加減なんですから。
(1)電流帰還がいいとわかっていてもできない。
(2)ピンコードに流れる電流があまりに少なすぎる。だれが決めたんだ、こんな規格。
(3)インピーダンスの無視。最適な終端も考えてない。だからピンコードでがらがら音が変わる。
(4)電源コードの差し込み方で音が変わる。これはアースの設計がいい加減だからこんなことが起きる。

だから素人であることをなーんにも恐れることはありません。
素人は直感を信じればいいんです。
直感で何かできるのは素人の特権。

現実的オーディオ組み合せ

安物のなかにすぐれた完成度の商品があったりします。
そういうのをするどく見つけていけば、安くシステムが組めます。
でも、安物で十分、という開き直った意味ではありません 。
値段にかかわらずいいものはいい。わるいものはわるい。

高級品は、お金のかけかたが合理的とは限らない。
だからお金さえだせばいいものが手に入るというわけではない。
だからオーディオはおもしろいし、怖い。

浮いたお金でCDを買うために
(1)普通のスピーカーコード、ピンコードを使う
(2)暖房はアラジン石油ストーブ(非常に静か、ほぼ無音)
(3)アクセサリーの類を理屈をつけて買わない。
「今度のは違う」「今度のは大丈夫だ、、、」中級者がよくひっかって散財するパターン
(4)直観を信じる。
中途半端な雑誌、販売店、マニアのいうことを鵜呑みにしない、疑ってかかる、自分で確かめる、視野を広くする
(5)電源のとりかたを工夫する
(6)振動混変調を甘く見ない
(7)いい音で聴きたければオーディオを道楽にしない。
オーディオは浪漫だなんていわない、オーディオを趣味と捉えてるといい音は出ない。オーディオは実用、道具、生活の一部。
(8)ブチルゴムとソルボセインを馬鹿にしないで味方にする
(9)アンプのうえに重りなんか乗せない。一切何も乗せない。
(10)必要ならば、躊躇なく、はんだごてを使う

安くてもハイエンドにひけをとらない音を出す実例

CDプレーヤー

最低4万は必要です。 あんまり安いのはフルサイズコンポなのにミニコンと部品が共通で、中身ががらがらだったりする。 TEACは安くても手抜きがない(今のところ)のでおすすめ。Marantz, Denonの安物はそこそこの音ですが値段相応に過ぎません。

  • TEACの業務用 TASCAM CD150(40000円) --- 無駄が少ないので部品にコストを投入できる。音は中庸。クリア。
  • TEAC CD-P6000(45000円) --- VRDSだけがTEACじゃない。普通の音。癖がない。妙な突っ張りがない。
  • Maranz CD6000-Original SE (40000円) --- Marantsとは思えない傑作。でもやはりMarantzの音がする。あたりさわりのない、力のない、芯の弱い音。Marantz独特のくすんだ音色ものこってる。いい音だけど、ぱっとしない。ゆるい。
  • Denon DCD-1650AZ (99000円) --- Denonの良さが出るのはこのクラスから。ひとつ下の1550でもなんとか我慢できるけどがんばってこっちにしましょう。ただし伝統的にDenonはDACなど回路にお金をかける主義なのか、そのコストのしわよせのためなのか、トランスポート部が良くない。

SACD/DVD-audio時代にも生き残りそうなCDプレーヤー
(お高いものなので参考)

  • Denon DCD-S10III (220000円) --- 女性むけ
  • TEAC VRDS-25xs (250000円) --- (創意工夫を厭わない)男性むけ
  • Linn Genki (250000円) --- Linnファンの現実的選択
  • Sony SCD-777ES (350000円) --- この内容なら安い

アンプ

パワーMOS-FETのシングルプッシュプルというキーワードで探せば、まず外れることはないんですが、MOS-FETでなければならないというものでもありません。でも、ふわっとした空気感、繊細な表現力、小さな音量でも情報量がよく出るといったことで選んでいくと結局MOS-FETになってしまうのも事実、、、

MOS-FETのアンプは電源部にお金がかかるので、最低7、8万円の値段がついてしまう。SonyのMOS-FETシングルプッシュプルのアンプが安いもので5万円なのは、赤字覚悟の価格設定をしてるからでしょう。こういうものを戦略モデルといいます。シェア奪取のための奉仕品です。体力のあるメーカーはこういうことができる。ほかのメーカーから恨みは買いますね。 Sonyのオーディオは庶民にとってありがたい存在です。Sonyの場合、ピュアオーディオで利益を出す必要はないですから。SACDの35万円ていう価格はよくがんばってると思います。

大音量再生での吹け上がりなんてことをMOS-FETに要求するのは難しい。これに挑戦してるのはDenonですが、安直に素子を並列にしたりしない。並列にすれば抵抗は減りますが、音が滲む。Denonはシングルプッシュプルにこだわっているんですね。MOS-FETを10個も並列にして音を滲ませ緩ませ、なんのためのMOS-FETか分らなくしてしまっているA社とは志しの高さが違います。

真空管アンプは避けるのが無難。いいものもありますがへんなものも多い。雑誌も無責任に「趣味性が高い」ものをとりあげるので注意。真空管に拘る理由は特にないはず。

MOS-FETのシングルプッシュプルのアンプを良心的なコストで作ってる会社が少ないのがつらいところ。
選択肢は、Sony、Denon、AuraDesignsくらい。

  • Denon PMA-2000III (100,000円) --- ちょっと売れすぎ。このアンプに使われているUHC-MOS-FETの音は普通のMOS-FETよりバイポーラに近くなってる。ほんとのMOS-FETの音を求めるならUHCは避けたほうがいいかな。もっとシビアに求めれば日立製のMOS-FETがもっともMOS-FETらしい音ですが、もはやそんなアンプは入手不可能。とにかく売れて当然のアンプ。
  • AuraDesigns Stingray 105 Standard (138,000円) --- もっと売れてもいいはず。
  • AuraDesigns VA200 (225,000円) --- お金があればこっち。

スピーカー

小型2wayで素性のいいものなら実用的で、しかもハイエンドな音を十分狙えます。実際には大型3wayより有利な点も多いんです。

振動混変調歪みの少ないものを挙げておきます。

  • Tanoy Revolution R1(55000円ペア)
  • B&W DM601S2(56000円ペア)
  • B&W CDM1SE (100000円ペア)
  • B&W Nautilus805(300000円ペア)

これらの2wayは突っ張った音をいっさい出しません。大人のオーディオ。王道。本格派。ゲリラ戦的2wayとは違います。
B&W Nautilus805(300000円ペア)はお金があればどうぞ。

オーラトーンなどのシングルコーン一発フルレンジのスタジオモニターは、確かに良品ですが、 ハイエンドなみの音はだせっこないから候補にはなりません。音場だけきれいに出せればいいという目的のスピーカーでは音楽を感動的には再生できませんし、シングルコーンは混変調歪みが多くて声楽なんか聴いてると疲れます。(2wayを否定してシングルコーンがいいなんて書く場合は、まず自分の聴く音楽を明示すべきでしょう、スペアナなんか載せるよりも。筆者がどんな音楽が好きかって重要な問題です)

安くてもハイエンドの音を出す、 というのがあくまでもこのページのテーマです。

スピーカーを置く場所はしっかりしたチェストならその上に置いても大丈夫。 そもそもブックシェルフなんてそういうふうに置くもの。 (いいチェストって結構高いんですが) わざわざ専用のスタンドを買うお金があったら、その分、アンプに回したい。

ラック

やっぱりいいものは5、6万はかかります。 でも一生使えるので、いいラックへの投資は無駄にならない。
スーパーエレクタ、ホームエレクタも十分使えます。へたなラックよりいい。 ちゃんとしたむくの木のベンチやダイニングテーブルやチェストの上に並べるという手もおしゃれ。

空気の逃げ場のない構造(箱になってるような空気のこもる構造)のラックは最悪。そんなものにおしこむより、床に直接置いたほうがいいでしょう。
(2000-01-31)

SACD

1999年の暮れ、SACDをじっくり聴きました。
CDが登場した時の不満がほとんどクリアされてる。
CDがやっと完成したという感じ。これなら完全にLPに勝てる。

SonyはとりあえずアナログマスターをSACD化することに専念するのが有意義だと思う。CDが出た当時、PCMデジタル録音のノウハウも、いいプロ機材もなかったから、DDDよりADDが音がよかったりした。それと同じ状況ですね。

新録なんていらない。
でもSonyだけではクラシックのタイトルを充実させられない。Sonyのクラシックなんてグールドとワルターとバーンスタインだけですから。SACDの現状のラインアップされたタイトルを見ると悲しくなってしまう。

CDがまともにADをこえられるようになるのに10年かかったから、
SACDもまともになるのに10年かかるという意見もあるがそうは思わない。結局、CD対SACDとは、PCM対DSDだから。

PCM方式は、録音から再生まで同じビット数、同じサンプリングレートでないと本領を発揮できない。それにCDのPCMのビット数とサンプリングレートはちょっと低すぎ。何でこんな中途半端な規格になったのかはいろいろ裏の事情があるみたいで、ひどいと判っていたのは確か。でもあの当時はこれでもすごかった。各社初号機の音のひどさもすごかった。

その後、プロ用16ビットPCM録音編集機材も充実し、ノウハウもできてきて、16ビットPCM録音のマスターから作るCDの完成度は満足のいくものになった。

これで止めておけばいいものを、マスターを24ビットPCM録音して、CDプレーヤーの方で24ビット相当の再生などといった技術でごまかすようになる。ありもしない情報を推量して加えて(補間)、24ビット相当の情報量に近付けるといったもの。

SonyのSBMに限らず、圧縮技術を使っているCDは、16ビットPCM録音をストレートにCDにしたものよりかえって音が悪かったりする。不自然だし、鮮度も落ちるし、いいことなし。

たしかにマスターを録音したデッキでそのまま再生できれば、16ビット録音より24ビット録音の方がいいのかも知れないけど、実際にCDになったときの音が良くないと話にならない。

ポータブルDATで録音してそのポータブルDATで再生した音はめちゃくちゃいい音がする。BISレーベルの音がいいのはポータブルDATを録音に使っていたから。

そんなこんなで、またCDの音は悪くなってきている。
こうしたことをなんとかしきり直そうというのが、SACD。
だから今までと同じことの延長にすぎないDVD-Audioより魅力がある。DSDという技術は、デジタルと言うより、ある意味、新しいアナログ技術なのかもしれない。

現実的に録音は1ビットで行われることが多くなってきているし、再生側も1ビットDACを積んでることが多い。
そうなるとCDだけが16ビットPCMということになってしまう。

1ビット録音したマスターを1ビットのままでCDに入れちゃえば、圧縮や丸め誤差の問題から開放される。理論的にとても美しい。

フィリップスはマスターをよく1ビットで録音してます。
これは現状のCD作成ではメリットがあまりないけれど、SACDが成功すれば将来1ビットで録音してたことが生きてくる。

しかし。

このページはお金をかけないオーディオがテーマなのでSACDは今のところ対象外。
ですが、20万円級のCDプレーヤーを買うつもりなら、35万円のSACD買ったほうがいいのかどうか、すごく悩むところ。

いまSonyのSCD-777ESに音質で対抗できるのは、

Denon DCD-S10III
TEAC VRDS-25xs
Linn Genki

くらい。

電池駆動

電池駆動のポータブルCDプレーヤーの音は、すごく良いんです、じつは。ちゃんとしたスピーカーとアンプにつなげば、うそだろう、と誰もが言うほどのいい音がします。

予算が無いときは、下手に中途半端な据え置きCDプレーヤーを買うより、ポータブルを使って済ませ、浮いた予算をスピーカやアンプに回したほうが得。お金が溜ったら、ちゃんとした据え置きCDプレーヤーを買えばいいんですから。

ただしいい音は、電池駆動に限ります。ACアダプタでは据え置きに負けます。

電池駆動だと、電源周りの問題がすべていっきに解決します。
いかに電源が音に効くかということの証明。
ニッカドを充電して使えば費用もそんなにかかりませんし。
お金の無いときはおすすめ。

自然な要求

普通の女の人がラジカセを卒業して、
コンポを購入する決意をしました。

スピーカーは明るい木目がいいな。
CDプレーヤーはごちゃごちゃつまみがついてるのはいや。
アンプもメーターなんか付いてるの、さいてー。

こんな当たり前の要求に応えられるオーディオが少ない。

特に日本製はほとんど失格。
超合金合体ロボットみたいなものばかり。
なんでアンプのフロントパネルが戦車の前面装甲みたいなんだろう。アンプで戦争でもするのかな。とくにメーター付きのゴールド色の日本製アンプなんて、いつまでそういうことやるつもりかな。出力トランジスタを馬鹿みたいに並列にして音をにじませてるし。メーターは顧客の要求だから外せないなんていいわけしてるけど、技術者としてやってることが美しくないと思わないのかな。

媚びるといえば、情けないスケルトンとかパステルカラーとかまるでポリシーがない。そんな子供だましがOLに通じると思ってるのだろうか。日本の工業デザインは世界最低水準であることはまちがいない。

いいものは結局、外国製になってしまう。舶来だからいい、とかっていうんじゃなく、結果的にそうなってしまう。こうした事実は単なるアンチ舶来主義者には理解できないかもしれない。

デンマークものはデザインがかっこいいけど、本気で音楽聞くにはちょっと物足りない。
イタリアものは木目がきれいだけど、やっぱり高いし、音質がちょっと遅れてる。
アメリカものはなんか黒いのばかりで色気も品もないし、いいものはべらぼうに高い。中庸ということばはアメリカには無い?
ドイツは意外にもオーディオをあまり作ってない。ドイツ人はたぶんオーディオで音楽を聞くよりも生の演奏会に行くんでしょう。オーディオなんかで音楽聴けるかとか思ってるのかな。
オランダものは家電なのでちょっと意味が違う。
スイスものはCDプレーヤーにいいものがあるけど、とても庶民の手の届く値段ではない。

あとはもうイングランドかスコットランド。
そうなんです。イングランドとスコットランドはオーディオ大国なのです。

ブリティッシュオーディオはオーディオの良心という気がする。
ブリティッシュオーディオが肝心なところをしっかり守ってくれてるから、他国のオーディオが遊んでいられる。

ブリティッシュオーディオ。

Acoustic Energy
Arcam
ATC
B&W
Celestion
The Chord Company
Creek
Harbeth
KEF
Linn
Meridian
Musical Fidelity
Naim
ProAc
Quad
Roksan
SME
TAG McLaren Audio
Tannoy

ざっと挙げただけでこれだけあります。この層の厚みはすごい。

残念なのはAuraDesignsが消えたこと。親会社のB&Wがスピーカー事業に専念するために切り捨ててしまった。これを見かねた日本の輸入代理店のユキムがAuraDesignsの灯を消すなとばかりに引き取りました。ですから、今はAuraDesignsは日本の製品です。部品はほとんど日本製になりました。できるだけオリジナルの音を維持しようと苦労されてるようです。

普通の女の人の自然な要求に応えられるアンプの最有力候補はAuraDesignsでしょう。CreekやMusical Fidelityもいいアンプですがデザインがプラスティッキーで黒くて嫌われるかも。
スピーカーはB&WのCDMシリーズが美しいリアルウッドを使った丹念な作りにもかかわらず手ごろな価格で文句なしの逸品。はっきりいって、この価格でこんなもの出されたら、他のスピーカーメーカーはやってられないでしょうし、他のスピーカーを敢えて選ぶ理由を見つけるのが難しい。もっとも世界中のスピーカーがB&Wだらけになってしまうのも困りますが。

CDプレーヤーは3万円のものでデザインのすっきりしたものを選んでおけばいいでしょう。デザインだけで選んで大丈夫なのかって?CDプレーヤーに関しては大丈夫です。CDプレーヤーは消耗品なので、安くても最新のものに常に買い変えていくのが賢い方法。マランツの3万円クラスのCDプレーヤーは昔から隠れた名機です。

ただしマランツがB&Wの輸入代理をやってるからといってマランツのアンプがB&Wと合うわけではありません。むしろ正反対の性格なのです。異文化交流という風情です。

表現

オーディオ評論の記事にはなにを書いてるのかさっぱりわからないものも多い。いろんな評論の分野の中でオーディオ評論がもっとも遅れていることはまちがいない。
かってな形容詞を連発するまえにまず、その形容詞をちゃんと定義して欲しい。
たとえば、ウォームトーンって、じゃどういう音なの、と聞かれてちゃんと定義できる評論家がいるんだろうか。

ありがちなパターン。
(1)分科系出身で、大御所で、業界での地位がある。
かならず印象批評になってしまって、ひとりよがりな詩的表現で煙に巻く。したたかな戦術だ。だれからも恨みを買う恐れはないが、結局なにも伝わらない。情報量はきわめて低い。
行間に隠れている真意を探り出す必要がある。
(2)技術者出身。
専門用語とカタログの受け売りでお茶を濁す。これも実際にはなんの情報にもならない。

ひどい記事だと実際に試聴してから書いてるのかどうか疑わしいときもある。

結局、どんな手段を使ってでも実際に自分で試聴しないと何もわからない。ただし、店頭での試聴には意味がないとはいわないが、ほとんどなにもわからない。

評論家がどんな音を好んでいるのかがわからないことには評論記事を読解することは難しい。この手の裏情報は長年オーディオ雑誌を読み続けていかないとなかなか得られません。

だから、必要なのは評論家の記事の翻訳家。

格言

BOSEを笑うものはBOSEに泣く

電線を切ってみる

ありがたく買ったはずの高純度銅の電線をはさみで切ってみると、中身は錆で青くなってたりします。

電線もお金をかければいいというものではないから救われます。
電線メーカーはできることのほとんどをやり尽くしたみたいなので、電線について経験をふまえてまとめておきます。

電線にまつわる謎といえば、
・超高純度銅を使った日本製高級ケーブルの音が期待されるほど良くない事実。
・安物のケーブルが意外によかったりする事実。
この謎をちゃんと追求して、ちゃんとまとめた記事を見たことがありません。
(オーディオの評論っていまだに印象批評で終わってて、なんでそういう結果になるのかという理由に突っ込んだ記事って少ないです。音楽の評論ならそれでもいいけど、オーディオの評論はもっと具体的になんでそうなるのか理由を追求する努力をしてくれればなあと思います)

(1) 銅の純度

純度を上げてもきりがないし、逆に普通の銅より猛烈に酸化しやすくなります。じつはこのことが致命的な問題なんです。
そんなに古くない、大事にしてきたはずの、高価な高純度銅の電線をはさみで切ってみると、中身は錆で青くなってたりします。同じころに買った普通の電線を切って見ても青くなったりはしてません。

皮膜は空気中の水分を完璧に遮断できないんでしょう。皮膜を剥いたり、ピンプラグを付けたりしているところなど、容赦無く酸化します。スピーカーコードの端を直接指でよじったりしたらもう最悪です。

高純度銅の電線は経年変化について保証はまったくされてません。工場で製造された直後はいい音がするのかもしれません。出荷時に錆びてるなんてことは絶対にないでしょう。しかし店頭にならび、実際に水分にも紫外線にもさらされて、1年も経てば、最悪の場合、もう錆びてるかもしれません。どれだけの期間、初期性能を維持できるかを保証されてるわけではないですから。

(2)メッキ

メーカーも酸化対策を施そうと思えばできなくはないんでしょうが、それをやると音が変わってしまうし、いい方向へ変わるとは限らないのが難しい。
すずや銀で高純度銅をメッキすると音に癖は出ますが、初期性能は維持しやすい。これはアメリカのメーカーが好む方法です。さびて青くなった高純度銅より、銀メッキした普通の銅のほうがましでしょう。

音声信号の電流は高い周波数になればなるほど電線の表面を流れる性質があります。ということは銀でメッキすれば高域は銀の部分を流れ、低域は銅の部分を流れる感じになるかもしれません。これで音に癖が出てくる。銀メッキの厚みによってはほとんど銀のところだけしか電流が流れないってこともあるでしょう。(すべてを銀にするなんて方法はバブリーなのでここでは除外します)

すずメッキだとリッツ線のような電流の流れ方になるかもしれない。電流は流れやすいところと、流れにくいところがあったとき、流れやすいほうへ集中して流れる性質がありますから。すずの部分はほとんど電流が流れず、すずは防錆の役目だけしてくれることになる。

しかし、メッキ線の音の癖は我慢できる程度のものですし、なにより初期性能は維持されやすいのですから、メッキという方法はもっと日本で評価されてもよいでしょう。お金をかけずにいい音を出すには有効な手法です。

(3) 絶縁体

むかしからスケルトンな皮膜は音がいいという定説があります。安くても評価の高い電線は皮膜が透明な塩化ビニールの場合がほとんどです。色素が材質の特性を変えてしまうのです。
材質も、塩化ビニールより、ポリエチレンがいいとかポリプロピレンがいいとか、絶対にテフロンがいいとかって話にもなりますが、まず透明の塩化ビニールでやれるだけのことをやってからにしてくれと思います。

実際には塩化ビニールで充分です。塩化ビニールは公害の原因になる物質だから、これからはポリプロピレンが有力かも。

ただし、材質は何であれ、材料に空気を混入させて作った発泡タイプは音が悪い。
結局、普通のものがいい。とにかく普通のものがいい。

(4) 単線か撚り線か

電線自体は細い銅線をいっぱい束ねてあるものより、単線(針金のような線)のほうがいい。束ねてるものなら、撚りはしっかりかけたものがいい結果を出してる。
ベルデン社のコードは撚りがしっかりしてていい音がします。
日本のコードはこのあたりが駄目。ぐすぐすしてる。

(5) 構造

いわゆる普通の平行構造がもっとも音場が広がります。位相的に伝送がストレートなんでしょうか。
ツイスト構造は外来ノイズには強くなるでしょうが、音質的にいい結果になった試しが無い。音場が出ないし、がさつきます。
同軸構造は付帯音が多いのが欠点ですが、音自体は悪くない。3C-2Vや5C-2Vという規格の同軸コードはピンコードに適します。絶縁体が発泡させてない普通のポリエチレンであること、導体が単線であること、ホットとコールドの距離が充分取られていることなどが利点です。でも、なぜか音場に奥行きが出ない。

とにかく変わったことをしていない普通の平行構造がいい。
ピンコードも同軸やツイストじゃなくて平行構造がいいんですが売ってない。

(6) 導体の太さ

太ければいいというものではありません。流れる電流に応じた適度な太さがあります。
あまり太いと電流に反射という現象が起こりやすくなり、音は濁って鈍くなります。音場も広がりません。またオーディオの電線にかかってる電圧などたかがしれているので、導体があまりに太いと電流が導体中を蛇行したりしてスムーズに流れないでしょう。適度な太さだと蛇行や乱流が起こりにくく伝送はスムーズになるでしょう。おもいっきり高い電圧がかかってればむりやり流れるので、蛇行乱流は起こりにくいでしょうが、それでも反射は起こるでしょう。

(7)これなら使える

  • モンスターケーブル社の7000円のピンコード(M350i)

    よく考え抜かれたバランスのいい設計で、音楽性に優れ、音場もよく広がります。 このコードにはほんとにびっくりしました。コードの品質が金額では決まらないことをはっきり見せつけてくれます。ツイストはかかってますが単線を二本だけよじったものを導体として使っていますから、ほぼ単線と同じストレートないい音がでます。
    市販のコードでこれを超えるものは価格に関わらずなかなかありません。安い割にということではなくて、どんな高価な凝ったコードと比較しても絶対的な品質が高いんです。
    ちょっとレンジが狭くて、ハイエンドとローエンドにアクセントを付けた演出を感じます。ツイストペア構造の利点と欠点がはっきりわかるコード。

  • ビデオ用の同軸ケーブル(ただし3C-2Vに限る)

    はんだ付けに自信があるひと向け。現実的に最高級な自作ピンコード。これにWBTのプラグをつければ完璧。リファレンスとして信頼できますから、市販のピンコードをあれこれ買う必要性なんて感じなくなります。
    これで音が変だったら、それはCDプレーヤーかアンプが悪いんです。コードのせいじゃありません。
    ストレートでワイドレンジ。妙な癖、色づけ、アクセント、演出が無くて音がすとんと出てくるのは同軸構造の特徴。

  • 電源配線用の単線ケーブル

    単線を使ったFケーブルと呼ばれる2芯の線。1mで150円くらい。自作するなら一度はこれを使ってみましょう。 ただし、シールドが無いので1メートル以下の長さで使う必要があります。(アルミのテープなどを直接巻いてシールドすると音が悪くなってしまう。渦電流損失が発生して音に伸びやかさがなくなる。シールドするならラックの内側にアルミフォイルを張るようにして、できるだけ電線の近くにシールドを置かないこと)
    高域があまり伸びない欠点を我慢すればほぼ満足できる音です。オーディオ評論家の長岡鉄男さんが使っているので一部のマニアには長岡式と呼ばれています。ピンプラグは安物を敢えて使います。安物で充分です。もっともこの電線にはんだ付けできるピンプラグには安物かWBT社製高級品しかありません。周波数特性的にハイ落ちになりますからツイーターのレベルを上げるなどしてバランスを取る必要があります。

コードでがらがら音が変わるCDプレーヤーやアンプなんて、そもそも設計が悪いんじゃないかなという気もする。
(1999-04-06,2000-01-22修正)

音楽のためのオーディオ

音楽のためのオーディオが欲しい。
オーディオにはあまりお金をかけず、浮いたお金でCDやLDをたくさん買いたい。

感動的な音楽再生には、それなりの装置がやっぱり必要なのだけど、実は30万円も用意すれば十分だったりします。装置の選び方と、使いこなしにセンスを出せばいいんです。

現代オーディオのテーマは「パースペクティブ」という言葉で表現できます。 パースペクティブとは、空間の存在感。音楽の高度な表現にはどうしても必要なものなのです。
現代のオーディオでは、音色はよくてあたりまえ、音の出方が問題なんです。オーディオマニアには、いまだ音色の次元で留まってる人が多いし、「奥行き、空気感、存在感、いわゆるパースぺクティブな表現力」を持っている装置は少ないし、そういう再生を目指してる人も少ない。

スピーカーには一本10万円ほど投資すれば、イギリスやアメリカのモニター系のものに、いいものがあります。プロ用がいいというわけでもないし、昔の名前だけで売っているようなものもあります。
モニター系のスピーカーは冷たいとか、線が細いといった印象は誤解です。確かにそういう音になりがちですが、それは組み合わせるアンプのせい。

いまでは超メジャーになってしまったB&W。
いいとかわるいとか、好きとか嫌いとかいった次元を超えた高品質な音がします。低音のスピード感をあまり追求せず、そのかわり、歪みが少なく、うるおいがあって、芯もある音を出して来ます。聴いていてとにかく気持ちいい音です。がさがさしたところがまったくない。イギリスのスピーカーの枠を破った斬新な存在で、いわゆるイギリスの音ではない。イギリス的中庸を基盤にアメリカ的明解さと力強さを併せ持っています。
アンプに対しては、正確な位相特性と、瞬間的な電流供給能力を求めてきます。それに応えるアンプで駆動してやれば、ものすごい高品質な音を出してきます。モニタースピーカーとしての正確な再現性と豊かな音楽性を兼ね備えた音。それでいて実用的な価格。安くはないけど。
シビアなセッティングが必要なので、一般向けではないのかもしれません。

B&Wと発想の違うところでは、ボーズのサブウーファー付きサテライト型システムがおもしろいし、アポジーなど比較的安価なコンデンサー型スピーカーも魅力的。

スピーカーに対する経験値を上げる意味でもバックロードホーン型のスピーカーは一度、自作してみる価値は大いにあります。とにかく豪快でハイスピードでダイナミックな音。でも付帯音が多くて音が濁るし、元気ははいいけど、下品でやかましくなりがち。それをどう押えこむかで泥沼になったりします。好き嫌いがはっきり別れるスピーカー。 ホーン型もいいものは濁りが少ないですが、値段がべらぼう。

アンプは、よく探せば5万円でそこそこのものがあります。
アンプの音は、部品の質と、組み立ての構造でほとんど決まります。大きさや重さや価格は、音と直接関係ありません。日本のメーカーがハイエンドとかいって気張って作ってもいい結果になるとは限りません。むしろ、普及価格帯のものにいいものがまぎれていることがあります。DENONはPMA390シリーズという3万円の優れたアンプを今も作り続けています。たぶん99%の人はこのアンプで十分満足できるんじゃないかな。SONYもTA-F222ESシリーズという5万円の凄いアンプを作ったことがありますが、バブルのころの話ですから、もうこの値段では作れないでしょう。
でも、この価格帯のものでは、空間の表現まではちょっと無理。

日本のアンプは音楽の表現がどうしても平面的になってしまいます。日本のエンジニアは肝心な所がわかってないんでしょう。知識、技術、経験といったすべてに関して幅と奥行きが狭いんでしょう。電気の勉強ばかりで音楽をたいして聴いていないんじゃないかな。音楽的な素養が無い。そんなものは大学で教えてはくれないから。

やっぱりアメリカやイギリスのアンプは違います。
イギリスのオーラデザイン社のアンプは繊細でありながら神経質なところが無く、躍動的で開放的な音はちょっと他では聴けない。パースペクティブな空気感を表現できる貴重な高性能アンプです。 それでいて20万そこそこでした。アンチ舶来なんていってる場合ではないのです。

アンプは、蓋を開けて見る事ができれば、基板や配線からだいたいの音は想像できますが、軽くあちこち叩いてみて、ボンボン、ギンギン、ビンビンいったりするものにろくなものはありません。物量投入でがちがちにすれば済むという単純なものでもない。このへんのコンストラクションについて大学では教えてもらえませんから技術者の音に対する感覚と経験ですべて決まってきます。

スピーカーは音の種類を支配し、アンプは音の品質を支配します。だからアンプさえ良ければ、スピーカーはどんなものでもそれなりに鳴ってくれる。アンプが悪いと、どんなスピーカーも嫌な音になってしまうのです。(1998-11-23)


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